ロイヤル・バレエの「くるみ割り人形」


Nutcracker
@Royal Opera House 3rd,Jan.

キンダイシュラン《★★★★☆》




前半第一幕の子どもが遊びすぎてメインに踊っている人より目立ってしまっていました。
「これ俺のだぞ」
「貸してよー」
の繰り返しが妙に目に付きました。

あと、群舞がもう一つ合ってなかったのが残念です
パリのオペラ座ならきっときっちりばっちりあっていたことでしょう。


以上が星一つ落とした理由。


以下絶賛と感想。



第一幕の舞台装置がすんごい。
あれは50年前でも普通にやっていたんだろうかっていう
そのくらい派手な舞台。


第一場、
 まず、くるみ割り人形の作り手あるいは魔法の使えるおじさんが
 紗幕の向こうで色々やります。
 おじさんのいる部屋の絵はさらに紗幕になっていて、
 その奥ではくるみ割り人形に扮した踊り手がいろいろ頭を抱えます。


第二場、
 クララのお屋敷のリビングで盛大なクリスマスパーティー
 子どもたちがプレゼントを奪い合い、
 大人たちは踊ります、
 ここの最後らへんでおじいちゃんとおばあちゃんが踊りだすのがすごく素敵です。
 途中くるみ割り人形をクララに贈るおじさんが魔法を使っていろいろとおもしろい人を出してくれます。
 魔法の人物たちは踊りだしておもちゃのチャチャチャ状態です。


おじさんの動きにあわせて舞台が引っ込み、
奥にあったツリーがさらに大きくなり、クララは小さくなって、
くるみ割り人形たちの世界へと迷い込んでいきます。
(これもぜんぶおじさんの魔法の効果で)


第一幕はねずみとの対決や雪の精の歓迎やらが続くのですが、
全然飽きませんでした。
なんでしょうか、あのキラキラした雰囲気。
面白くてたまりませんでした。


休憩中、
 隣に座っていたまあまあ美人の女の子二人が
 ヨーロッパの「オペラ座」めぐりをしているようで
 ウィーンやパリにも行ったみたいでした。
 「全然見分けつかないんだけど」とか言ってるのが大変にかわいそうでした。
 「さっきの最後のが金平糖だよね」とか言ってて、
 もうなんかすごくあわれでした。
 声を掛けようかと思ったのだけど、
 日本人相手の日本人詐欺に思われたらイヤだったのでやめました。


顔はキレイだったけど、お腹のお肉はたるんでいました。



第二幕
金平糖の国に着いたクララとくるみ割り人形を待ち構える
金平糖のお姫様と王子さま。

各国の踊りが次々と繰り出されて、
(この人らのリズムがバラバラだった)
締めに近い頃になって花のワルツ。
一人だけリズムにぴったりと乗って歌うように踊る女性が一人。
Sarah Lambというダンサーらしいですが、
彼女がすごかった。
バラの精を踊る彼女が出てからと言うもの
すべてのダンサーのリズムがぴったりと重なって、
そして彼女は誰よりもキレイでした。

花のワルツが始まって、群舞の中をくるくると回って駆け抜けていく彼女の姿は
毎回毎回残像を残していきます。
拍手をするまもなく次々と進んでいくワルツに
拍手を待つ手がしびれを切らしてしまいました。
ワルツの終わったと同時に盛大な拍手。


お辞儀をしてハケる彼女のあとに出てきたのは
金平糖の姫様と王子様です。


この二人のグランパドゥドゥはとんでもなく軽やかで楽しげでした。
途中誰かが舞台裏で「バターン!」と何かを倒したような音がして
それに気をとられた感じで
姫様の動きがぎこちなくなったりもしたけれど、
きっちりしっかりと丁寧に決める二人の踊りは
だんだんとスムーズになっていきました。


Dance of Mirlitonのあたり(花のワルツ一個前)から
僕は泣き出していて
目の前はもうなんかモザイクがかかったような感じで
舞台を見ていたのだけれど、
金平糖の踊りの一つ一つのステップが
僕の胸にザクザク刺さりました。
バレエを見てこんなに泣いたのは初めてです。


フィナーレを終えて、夢から覚めたクララ。
そして観客も幕が降りると同時に夢から覚めます。
まるで二度寝を無理にでもしたい子どものような気持ちで
拍手は鳴り止みませんでした。


クララとくるみ割り人形のダンサーにも拍手。
バラの精の彼女にはより大きな拍手。
最大の賞賛を浴びたのはもちろん
金平糖の姫様と王子様でした。
花束が渡され、何度もお辞儀をして客席は明るくなりました。


満足げに帰っていく観客たちに紛れて、
僕はさっきまで見ていたくるみ割り人形というバレエについて
いろいろと、ぐるぐると、何度も何度も思い出していました。


ちなみに
金平糖の姫様を演じたダンサーは
吉田都でした。