最高のリア王見てきた。

King Lear
@Young Vic
Directed by Rupart Goold


キンダイシュラン《★★★★★》


音響の設備がちょっと悪いのだけど、
そんなのはもう、どうだっていいってくらいに、
役者から何からほとんど最高のリア王だった。


狂った真似をするエドガーを信じ始めるリアの「Let me speak more to this philosopher」
で泣けるとは。
ぐっと来るせりふが今までの感覚とはぜんぜん違うところでズバズバきた。


引き続いて惨めなトムことエドガーとリアと道化で行う「模擬裁判のような愚痴の言い合い」のシーン。
あんなに真実を語ることが狂ったように見えてしまうという事実を直視した演出はないと思う。
しかも、シェイクスピアの言葉そのままだというのに何であんなにも生き生きとしたものを生み出せるんだろうと、
ホントにシェイクスピアの英語と現代の英語の常に語ることで伝わってきたものとしての言語を考えさせられた。


今バービカンでやってるShunkinもどうやっても書き言葉の域を超える事は出来ない。
それは日本語というものが結構早い段階で書き言葉と話し言葉を区別してしまったからだと思う。
いくら言文一致をやろうとしたところで、あの書き言葉の美しさを話し言葉でやるには、
音楽だとか演劇の型を使うほかにはないのだとおもう。
リアリズム演劇をやろうとして日本の古典をそのまま出来ないのは、
やったとしてもどうもちぐはぐな感じになるのは、その言文一致ができていないからだと思う。


シェイクスピアの英語と現代の英語はその点、はなっから言文一致が出来ていたわけなんだろうと、そう思いました。


まあ、勝手な仮説ぶち上げてますけど。


エドガー役の人がすごくよかった。
ホントによかった。
目をつぶされた父親と会って身分を明かさずに狂った不利を続けようとする自分と本心との葛藤がいちいち胸に迫る。
前半の初めのほうで早速エドマンドによってつぶされちゃうけれど、
その後リア王と出会ってだんだんと立ち直るエドガー。
エドマンドと決闘して彼に致命傷を負わせながらも、心からエドマンドを憎む事は出来ないエドガー。


いやぁ。ほんとに。


よかったなー。


ルパート・グールドはすごい演出家だと思います。
こないだ見た「作者をめぐる6人の登場人物」にしても、
とことんブラックに描きながらどこか人間のおかしみをちらりと見せるあたり、
にくい。
そいえばNo Man's Landはつまんなかったけれど。


いやぁ、よかった。
リア王すごくよかった。