パイパーを見た


パイパー
By 野田秀樹
シアターコクーン

キンダイシュラン《★★★★☆》


野田さんが開き直ってた。
まるで、俺の書くことはこれだけだ、とでも言うような感じで、
いままでの野田さんの作品が全部入ってたような気がする。

たぶん、この芝居のあと、野田さんは本を書くことよりも演出することに視線が向かいそうな気がする。
と思わせるようなお芝居を野田さんはずっと書いてたので、たぶん書き続けるし、演出し続けるし、
舞台には立ち続けると思う。


ただ、今回は、野田さんは開き直ってた。


パイパーっていうなんだかよくわからないけれど人間を裁いていく仕掛けが、
どんどんと人間を捌いていく感じだとか、
コンドルズのダンスだとか、プラスチックのカーテンだとか、
ゆらゆら揺れる光の筋だとかがなんだか本当にかげろうに見えてくるかんじだとか、
思い出せばきりがないのだけど、
ズビズビと肌に刺さってもぐりこんでくるようなイメージが、
目ではなく、耳でもない場所から湧き上がってくるような錯覚を何となく感じた。


これは野田史上に残る作品になると思う。
あたりまえか。野田の作品は全部野田史上に残ってるわけだから。


あと、週刊誌でも騒がれてたらしいのだけど、
役者の現実と、全く逆のことが舞台では起こっていて、
なんというか、
女性キャラクターがどんどんと子供を孕んでいくのに、
ただひとり孕むまいと、帰ってくるかもわからない人を待ち続ける女性を
宮沢りえが演じていたのが、
ちょっと現実と舞台のはざまを見ているようで、クラクラした。


役者っていうのは、ほんとに舞台にいないといけないんだなって、思った。