夜中に犬に起こった奇妙な事件を読んだ。

ちょっと、本にキンダイシュランをつけるのもいいかと思い、
レヴューです。

友達に薦められて読みました。

The Curious Incident of the Dog in the Night-time

The Curious Incident of the Dog in the Night-time

という本です。

キンダイシュラン<★★★★☆>

英語で読みました。
全部で268ページ。
1ページにつきおよそ400語。なので十万語程度のホンです。
単語も文法も高校生で十分読める程度のものです。

mixiのおすすめレヴューを見たら、
センター試験対策に読んでいる人がいるくらいなので、
やはり簡単な英語を使っているんだと思います。



語り手で主人公のクリストファーの文章は
とても緻密で一文が短く、的確です。
関係代名詞を洗いなおしたい人にはぜひ読んでもらいたい。
普通の、ちょっと潔癖気味の、少年です。


彼はある日犬が殺されているのを見つけて、
その犯人探しを始めます。
この本は、
彼が学校の先生に文法を直してもらいながら書いた
ということになっています。


児童向けの本だと思っていたけど、
表現がとてもきついし、
クリストファーが言われたことを
そのままそっくりカギカッコに入れて書くので、
普通なら***kとかs***とかで表されてしまうところを
そのままありありと書いています。
子どもが読むためのエディションがあるらしいので、
小学校や中学校に進むお子様には
児童向けのエディションをオススメします。



この日記を読んでる人でどれだけこれから読むかわからないけど、
まだ読んでいない人で、
ミステリーの好きな人は読んでみると面白いと思います。
あと、ロンドンに住んだり旅行したりして、
あの環境が好きだった人は、たまらず涙すると思います。


この本の背表紙に、
主人公のクリストファーはアスペルガー症候群をわずらっていると
書かれているのだけど、そういう目で見てみれば、
たしかにそうかもしれないけれど
本にはそんなことはまったく書かれていません。
ただ、クリストファーは特別な学校に行っているし、
人間の感情を見抜くことはできません。
言葉にものすごく敏感で、
定義というものを愛し、
数学と物理を得意とし、
整理されたものを好み、
黄色と茶色を嫌い、
人に触られることを極端に避け、
何か混乱するとうずくまり、‘Groan’します。
でも、こういうことって普通の人にだってよくあるし、
なんというか、
クリストファーはその状態をものすごく素直に表現していると思います。


誰だって嫌いな色はあるし、好きな人はいるし、
知らない人は怖いし、
狭いところにいるとちょっとだけ落ち着きます。
はっきりきっちりしたものを好むし、
曖昧なものをあまり好みません。
もちろん、人間というものが曖昧なものだから、
曖昧であって当然なんだけど、
曖昧なものほど混乱するものはないし、
曖昧なものほど興味をそそるものはありません。


実際、クリストファーは曖昧なものに日常を委ねてます。
たとえば、学校へ行くバスに乗って外を見て、
赤い車の数を見てその日がいい日かどうかを占います。
黄色い車を見たらあんまりよくない日で、
黄色の車を三台見たら、その日は誰とも喋らずに
いわゆる「忌日」にします。


気に入ったのはその文章の無表情さです。
主語は常に‘I’なんだけど、
そこにいわゆる感情はありません。
HappyとSadがなんとかわかる程度の感受性しか持たない彼の
あまりにも緻密な、客観的な文章を読んでいると、
読者は感情を入れ込まずにはいられなくなります。


嘘をつかれたときのショックや
相手の正体がわからないときの恐怖、
「やりたい」と「やらなきゃいけない」の間の葛藤、
正直に生きることの難しさや
相手がわかる程度の言葉を選ぶときの緊張、
そしてなにより、
指示標識のありがたみが
じわぁあっと伝わってきます。



この本はとりあえずはミステリーですが、
ミステリーは前半で終わります。
残りはヒューマンドラマですが、
一気に読めます。
なんでページをめくらずにはいられないのか、
どうもわかりませんが、
この本はまさに、
'Page-turner'です。
良ければどうぞ。