英語版「父と暮らせば」を見てきた


Face of Jizo 「父と暮らせば」
by いのうえひさし
@Arcola Theatre
Produced by Ichiza


キンダイシュラン<★★☆☆☆>


Ichiza(一座)という劇団の旗揚げ公演だったようです。
演じているのは日本人で、彼らは英語で上演します。
日本語訛りの英語で、一生懸命演技してました。
1週間前にケンブリッジで英語訛りの日本語を聞いていたのと全く逆の状況を目の前にして、考えさせられるものがありました。

劇場の場所はロンドンの治安の悪い地域で有名なハックニーのちょっと北のあたり。
ちょっと怖い雰囲気はありましたが、駅の近くだということもあって、いそいそと道を歩いて劇場まで行きました。
小さいフリンジの劇場で、とても雰囲気があっていい劇場でした。
ただ、外からの騒音が劇場まで響いてくるのはちょっと残念でしたが。


この芝居は二人芝居で、宮沢りえの映画にもなった名作。
ぼくも高校生の頃、紀伊国屋シアターでこまつ座の公演を見ました。
そのときの印象としては、とにかく原爆投下時のエピソードが始まるとひたすら怖かったというものでした。
原爆の恐ろしさというのは、何度聴いても胸が痛くなるもので、小さい頃から「はだしのゲン」や広島の原爆資料館でみた白い影や8時15分で止まったままの時計、黒焦げになった弁当を見て育ってきたので、
今回、「熱で変形したガラス瓶」や「うろこ状に逆立った瓦」や「突き刺さったガラス片」が本物そっくりで出てくると、ドキドキしました。


いのうえひさしって、やっぱりいい芝居を書くなあと思います。


今回の公演をした一座という劇団は、いままでプロとしてイギリスを中心に活躍していた日本人たちが集まってできた団体で、彼らのプロフィールを見ると輝かしいものがあります。
ものすごいポテンシャルを持っている団体だと思うので、長く続いてほしいと思います。
「父と暮らせば」はいのうえひさしの作品の中でも歌がなかったりして、ちょっと異色ではあると思うのですが、ストレートな芝居です。
もっともっといろんなことに挑戦していける団体だと思うので、今後ちょっと注目していきたいと思っています。