ロイヤルバレエ・バランシンのJewels

Jewels
@Royal Opera House

Choreography
 George Balanchine
Music
 Gabriel Fauré
 Igor Stravinsky
 Pyotr Il'yich Tchaikovsky

Conductor
 Valeriy Ovsyanikov

第1幕Emeralds
 Ivan Putrov
 Leanne Benjamin
 Tamara Rojo
 Edward Watson

第2幕Rubies
 Sarah Lamb
 Carlos Acosta
 Zenaida Yanowsky

第3幕Diamonds
 Alina Cojocaru
 Rupert Pennefather


キンダイシュラン<★★★★☆>



ジョージ・バランシンニューヨーク・シティ・バレエの創設者であり、振付師でもあるひとです。
このJewelsというのは三つの宝石、エメラルド、ルビー、ダイヤモンドをモチーフにして、
それぞれに違う作曲家の曲を使い、そこにバランシンが振りをつけたもの。
大変にアメリカらしさを感じさせるものでした。

なんといっても第2幕のルビーがいい!
僕の注目していたのはサラ・ラムとカルロス・アコスタのペア。
音楽はストラヴィンスキー
振り付けはジャズダンスの影響(どっちが先なんだろう。。。)を感じさせる、腰を大きく突き出したり、膝を直角に曲げるガニ股開きが印象的なユーモラスなものでした。
圧倒的存在感を出していたのは、群舞の真ん中に必ずいるヤノフスキーさん。この人の背の高さから繰り出されるダイナミックなつま先で立って繰り出されるガニ股と恥骨フラッシュにはもう、乾杯です。

カルロス・サラのペアの音楽にばっちりと合ったキレのいいダンスは、もはやバレエというよりもラテン系の社交ダンスのようでした。
そのノリはまさにバーン・ザ・フロア!!!
音楽も徐々に盛り上がっていって、カルロスが四人の男に追いかけられながら逃げる。
その逃げるのが先か、音楽の加速するのが先か。
最後へ向けてバイオリンのずんずん迫るようなリフレインがいやがおうにもこっちを引きずり込ませます。
最後、線対称にVの字に並んだ状態で繰り出される一瞬のジャンプ、そして決めのポーズ。
この二段階で終わらせるあたりがもう鳥肌。
一気に降りる真っ赤なカーテン。


喝采でした。


この興奮が収まった第3幕。ダイヤモンド。
群舞が主になっているんですが、この群舞がとんでもなかった。
音楽は言わずと知れたチャイコフスキー。盛り上げ方の分かっている大作曲家です。
彼の華やか音楽にダイヤモンドを意識した真っ白な衣装で大勢の男女が一糸乱れずに踊るさまは、アメリカのMGM映画でよく見るあれです。大衆的な、あのこれぞまさにハリウッド!というあのラインダンスともコーラスラインともいえる、あのアメリカを代表する種類のものでした。
白鳥の湖の群舞にはないただひたすらに線対称の派手な振り付けというのは、なんというか、バランシンのものなんでしょう。
「バランシンメトリー」とでも呼ぶべきなんじゃないかと思うほど。


曲が中盤に入って加速し始めると、ダンサーの出入りが激しくなるんですが、なにしろクルクル回りながら退場するのがとんでもなかったです。
退場する寸前にフィギュアスケートのスピンよろしく急にギュンッと早くなる。
その残像を残してすっと消えて反対側から新しいダンサーが一気に飛び出してくる。
この応酬です。

なんといっても終わり方がものっすごく、くどくておなかいっぱい。
あ、盛り上がったぞと思うと同時にこりゃ終わるなと感じさせる中盤。鳥肌立ちました。
すごい、まだ盛り上がるぞ、と鳥肌が立ち続ける終盤の前半。
群舞も、これでもかと線対称でのクロスを繰り返して次々と新しいフォーメーションを出していきます。
終盤の終盤、音楽の盛り上がりもこれ以上ないだろうというところまでもり上げる。
フォーメーションも逆V字になって真ん中にプリンシパルの二人を挟みます。
最後のジャン!
ジャン!
ジャン!
ジャン!
ジャーン!
…(ここで思いっきりためる)
ジャン!


もう、ほんと、こりゃ音楽がよすぎる。
相変わらずロイヤルの管楽器たちはいまいちだったのですが。
盛り上がるところはちゃんとごまかしがきくのだろうけれど、やっぱり、抑えるべきあたりでホルンのプオ〜ンがすごく残念です。あとフルートのソロがすごく自信なさげで、変に震えていました。残念です。
第一幕のエメラルドは特に抑えた踊りだったので、演奏の良し悪しがバレエ全体を左右しちゃう。せっかくのタマラさんもなんだか印象に残らなかったです。


カルロス・アコスタさんの野性と、ヤノフスキーさんの身長に乾杯です。


いい夢見ます。
これを8ポンドで見ました。いい国です、イギリス。