Chi Chi Bunichiを見てきた。


Chi Chi Bunichi
@Camden People's Theatre


キンダイシュラン《★★★★☆》


友達と、セントラルの先生が出ていたので、見に行きました。
すっごくよかった。
でも頭良すぎる感じがした。
計算とかみえみえだった。
でも泣けた。
その涙は計算外の涙だったと思うけれど。

とても小さな劇場で、お客さんは15〜20人くらい。
4人がけのベンチが5つあって、ぐるっと囲んでいます。
囲まれた中にはジャガイモがいくつかばら撒かれていて、
ベンチの間には楽器が置いてあります。
うくれれ、アコーディオン、トランペット、小さいシロフォン、小さいオルガン。

席に座ると、チケットのもぎりをやってた人や席の案内をしてくれる人たちが、お茶をすすめてくれます。
お菓子も出るんだけど、それはトルコのお菓子で、落雁のしっとりしたようなものでした。

もぎってた人が、ジャガイモを片付けようとして拾い続けるんだけど、手がふさがってしまって、
お客さんにジャガイモを拾ってもらうように頼みます。
僕も拾ってあげました。

するとジャガイモを抱えていた女性は泣き始めて、ジャガイモが落ちるたびに亡くした人の名前でそのジャガイモを呼びます。
泣きながらお客さんに「あなたの名前は?」と聞いていきます。
そして一人客席に座っていた人に名前を聞いて、真ん中に出てくるように頼みます。

真ん中に立った彼は女性にいろいろと指示を受けるのだけど、
そのうちに急に歌いだします。


びっくりします。客席の人はすっかり素人だと思ってたのに、それが仕込だったと知って。
そして、彼の歌のうまさに。ギリシャ・トルコのちょうど間に栄えたような歌の調べに乗せて、
一人一人のダンサーの持つ記憶から出てきたシーンが繰り出されます。

浮き上がってくるのはキプロスの混乱に翻弄された人々の悲しみでした。

何よりも悲しかったのは、戦争が終わると聞いたはずなのに、結局終わらずにいる状態で、
悲しい曲が流れます。
ふと客席に目を移すと、50歳くらいのお客さんが一緒に口ずさんでいました。
目に涙を浮かべながら。

そのおっさんの涙にもらい泣きしてしまいました。


最後、ダンサーが腕の中で死んで抱えられて、横たわるところで
ふと起き上がって「ねえ、もっかい腕ん中で死んでいい?」と聞きます。
すると、相手の男の人も、「え、ああ、いいよ」と言ってやり直します。
やり直したあともなんだか気持ちが良かったらしく、「もいっかい!」と頼みます。
そのうち今度は、他の演者に向かって「ねえ、僕の腕の中で死んでみる?」と聞き始めます。
どうやら気持ちいいらしいぞ、楽しいらしいぞということで「ぜひ!」ってんで死にます。
やがて演者は客席にその「僕の腕の中で死んでみる?」の矛先が向きます。
じゃあってんで客席の人たちも死んでみます。
僕も死んでみました。

みんな面白おかしく死んでいくんだけど、これってすごくおっそろしいことをしてるとおもいました。


さっき泣いていたおじさんは、やっぱり死ぬのを拒否していました。


何も知らずに何度も死ぬ客をみて、死の恐ろしさがどんどんと高まるのを自分の中に感じました。



「最後のラストチャンスだよ!」ってなって、
周りでは舞台の片づけが始まると、音楽がかかります。
演者たちはそれぞれのお客さんに向けて
「じゃあ、今日はホントにありがとう、これで終わりです」
と言って、まだ死に続けているお客さんも残して、ざわざわとお客さんも帰る支度を始めました。
戸惑いながらも支度をするお客さんの中から拍手をする音が聞こえて、
やっと全員の拍手がでました。


カーテンコールのないパフォーマンスも久しぶりに見ました。
落語の終わり方に似ているような気もしました。
形は全然違うけれど。

20人の客に囲まれて、演者もそのままそこにい続けて、来てくれた人たちにすっと挨拶をしていきます。
挨拶をして、自然と会話の輪ができて、つまり、日常と非日常の境目をそこにマザマザとみせつけてくれました。


すごい。
頭良すぎる。


もうどこでやるのかわかりませんが、
きっと面白いと思います。ロンドンか、あるいはエディンバラのフェスにいくかもしれません。
一回見とくといい出し物だと思います。