大阪の「地方公務員法の政治的行為」に関する条例案と国家公務員の政治的行為について

2012年6月21日、大阪市は、地方公務員さんがやっちゃいけない「政治的行為」についての条例案、その内容を公表したんだそうです。
ちゃんと公表するっていうのは素晴らしいですね。そしてそれがニュースになるっていうのもいいことです。
いつだったか、震災復興基本法の全文がわからなくて、すごい困りましたから。


いろんなところで(といってもネット上で)話題になっているなかで、
僕自身も演劇をやる身として「へえ〜」と思うこともありましたので、ここに書いておきます。





まずはその全文を。

職員の政治的行為の制限に関する条例(案)

第1条(趣旨)この条例は、地方公務員法の政治的行為の制限に関し必要な事項を定めるものとする。

第2条(条例で定める政治的行為)
(1)職名、職権又はその他の公私の影響力を利用すること

(2)賦課金、寄附金、会費又はその他の金品を国家公務員又は本市の公務員に与え支払うこと

(3)政党その他の政治的団体の機関紙たる新聞その他の刊行物を発行し編集し配布し又はこれらの行為を支援すること

(4)多数の人の行進その他の示威行動を企画し、組織し、若しくは指導し、又はこれらの行為を援助すること

(5)集会その他多数の人に接し得る場所で又は拡声機、ラジオその他の手段を利用して、公に政治的目的を有する意見を述べること

(6)政治的目的を有する署名又は無署名の文書、図書、音盤又は形象を発行し、回覧に供し、掲示し、若しくは配布し、若しくは多数の人に対して朗読し、若しくは聴取させ、又はこれらの用に供するために著作し、若しくは編集すること

(7)政治的目的を有する演劇を演出し若しくは主宰し又はこれらの行為を援助すること

(8)政治上の主義主張又は政党その他の政治的団体の表示に用いられる旗、腕章、記章、えり章、服飾その他これらに類するものを製作し又は配布すること

(9)勤務時間中において前号に掲げるものを着用し又は表示

(10)何らの名義又は形式をもってするを問わず、前各号の禁止又は制限を免れる行為をすること

第3条(本市の区域外から行う政治的行為)職員が法第36条第2項第1〜3号及び前条各号に掲げる政治的行為を、電話をかけ、又はファクシミリ装置を用いて送信する方法その他の方法により、本市の区域外から本市の区域内にあてて行った場合は、当該政治的行為は本市の区域内において行われたとみなす

第4条(懲戒処分)任命権者は、職員が法36条第1〜3項の規定に違反して政治的行為を行った場合には、「地方公務員の政治的行為に関する質問趣意書」に対する内閣の答弁の趣旨を踏まえ、当該職員に対し原則として懲戒処分として免職の処分をする等の必要な措置を公正かつ厳格に行うものとする

第5条(施行細目)条例の施行に関し必要な事項は任命権者が定める。

以上

ちなみに、国家公務員のやっちゃいけない政治的行為

↓から引っ張ってきました。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S24/S24F04514007.html


人事院規則一四―七(政治的行為)
(昭和二十四年九月十九日人事院規則一四―七)

最終改正:平成一九年九月二八日人事院規則一―五〇


 人事院は、国家公務員法 に基き、政治的行為に関し次の人事院規則を制定する。

(適用の範囲)
1  法及び規則中政治的行為の禁止又は制限に関する規定は、臨時的任用として勤務する者、条件付任用期間の者、休暇、休職又は停職中の者及びその他理由のいかんを問わず一時的に勤務しない者をも含むすべての一般職に属する職員に適用する。ただし、顧問、参与、委員その他人事院の指定するこれらと同様な諮問的な非常勤の職員(法第八十一条の五第一項に規定する短時間勤務の官職を占める職員を除く。)が他の法令に規定する禁止又は制限に触れることなしにする行為には適用しない。
2  法又は規則によつて禁止又は制限される職員の政治的行為は、すべて、職員が、公然又は内密に、職員以外の者と共同して行う場合においても、禁止又は制限される。
3  法又は規則によつて職員が自ら行うことを禁止又は制限される政治的行為は、すべて、職員が自ら選んだ又は自己の管理に属する代理人、使用人その他の者を通じて間接に行う場合においても、禁止又は制限される。
4  法又は規則によつて禁止又は制限される職員の政治的行為は、第六項第十六号に定めるものを除いては、職員が勤務時間外において行う場合においても、適用される。
(政治的目的の定義)
5  法及び規則中政治的目的とは、次に掲げるものをいう。政治的目的をもつてなされる行為であつても、第六項に定める政治的行為に含まれない限り、法第百二条第一項の規定に違反するものではない。
一  規則一四―五に定める公選による公職の選挙において、特定の候補者を支持し又はこれに反対すること。
二  最高裁判所の裁判官の任命に関する国民審査に際し、特定の裁判官を支持し又はこれに反対すること。
三  特定の政党その他の政治的団体を支持し又はこれに反対すること。
四  特定の内閣を支持し又はこれに反対すること。
五  政治の方向に影響を与える意図で特定の政策を主張し又はこれに反対すること。
六  国の機関又は公の機関において決定した政策(法令、規則又は条例に包含されたものを含む。)の実施を妨害すること。
七  地方自治法 (昭和二十二年法律第六十七号)に基く地方公共団体の条例の制定若しくは改廃又は事務監査の請求に関する署名を成立させ又は成立させないこと。
八  地方自治法 に基く地方公共団体の議会の解散又は法律に基く公務員の解職の請求に関する署名を成立させ若しくは成立させず又はこれらの請求に基く解散若しくは解職に賛成し若しくは反対すること。
(政治的行為の定義)
6  法第百二条第一項の規定する政治的行為とは、次に掲げるものをいう。
一  政治的目的のために職名、職権又はその他の公私の影響力を利用すること。
二  政治的目的のために寄附金その他の利益を提供し又は提供せずその他政治的目的をもつなんらかの行為をなし又はなさないことに対する代償又は報復として、任用、職務、給与その他職員の地位に関してなんらかの利益を得若しくは得ようと企て又は得させようとすることあるいは不利益を与え、与えようと企て又は与えようとおびやかすこと。
三  政治的目的をもつて、賦課金、寄附金、会費又はその他の金品を求め若しくは受領し又はなんらの方法をもつてするを問わずこれらの行為に関与すること。
四  政治的目的をもつて、前号に定める金品を国家公務員に与え又は支払うこと。
五  政党その他の政治的団体の結成を企画し、結成に参与し若しくはこれらの行為を援助し又はそれらの団体の役員、政治的顧問その他これらと同様な役割をもつ構成員となること。
六  特定の政党その他の政治的団体の構成員となるように又はならないように勧誘運動をすること。
七  政党その他の政治的団体の機関紙たる新聞その他の刊行物を発行し、編集し、配布し又はこれらの行為を援助すること。
八  政治的目的をもつて、第五項第一号に定める選挙、同項第二号に定める国民審査の投票又は同項第八号に定める解散若しくは解職の投票において、投票するように又はしないように勧誘運動をすること。
九  政治的目的のために署名運動を企画し、主宰し又は指導しその他これに積極的に参与すること。
十  政治的目的をもつて、多数の人の行進その他の示威運動を企画し、組織し若しくは指導し又はこれらの行為を援助すること。
十一  集会その他多数の人に接し得る場所で又は拡声器、ラジオその他の手段を利用して、公に政治的目的を有する意見を述べること。
十二  政治的目的を有する文書又は図画を国又は特定独立行政法人の庁舎(特定独立行政法人にあつては、事務所。以下同じ。)、施設等に掲示し又は掲示させその他政治的目的のために国又は特定独立行政法人の庁舎、施設、資材又は資金を利用し又は利用させること。
十三  政治的目的を有する署名又は無署名の文書、図画、音盤又は形象を発行し、回覧に供し、掲示し若しくは配布し又は多数の人に対して朗読し若しくは聴取させ、あるいはこれらの用に供するために著作し又は編集すること。
十四  政治的目的を有する演劇を演出し若しくは主宰し又はこれらの行為を援助すること。
十五  政治的目的をもつて、政治上の主義主張又は政党その他の政治的団体の表示に用いられる旗、腕章、記章、えり章、服飾その他これらに類するものを製作し又は配布すること。
十六  政治的目的をもつて、勤務時間中において、前号に掲げるものを着用し又は表示すること。
十七  なんらの名義又は形式をもつてするを問わず、前各号の禁止又は制限を免れる行為をすること。
7  この規則のいかなる規定も、職員が本来の職務を遂行するため当然行うべき行為を禁止又は制限するものではない。
8  各省各庁の長及び特定独立行政法人の長は、法又は規則に定める政治的行為の禁止又は制限に違反する行為又は事実があつたことを知つたときは、直ちに人事院に通知するとともに、違反行為の防止又は矯正のために適切な措置をとらなければならない。

   附 則 (平成一一年一〇月二五日人事院規則一―二六)

1  この規則は、平成十三年四月一日から施行する。
2  国家公務員法等の一部を改正する法律(平成十一年法律第八十三号)附則第三条に規定する旧法再任用職員に係る再任用及び再任用の任期の更新の状況の報告については、なお従前の例による。

   附 則 (平成一二年一二月二七日人事院規則一―三三) 抄

(施行期日)
1  この規則は、平成十三年一月六日から施行する。

   附 則 (平成一五年一月一四日人事院規則一―三七) 抄

(施行期日)
1  この規則は、平成十五年四月一日から施行する。

   附 則 (平成一九年九月二八日人事院規則一―五〇) 抄

(施行期日)
第一条  この規則は、平成十九年十月一日から施行する。


というわけで。

僕は知らなかったんですが、
国家公務員っていうのは「政治的目的を有する演劇を演出し若しくは主宰し又はこれらの行為を援助すること」もやっちゃいけなかったんだそうです。
たぶん「国家公務員だって地方公務員だって、やってることは一緒だろうがよ」っていう気分で、大阪市条例案を作っているんだと思うんです。
こういうのの中に、宗教が入っていないのは、またほかのところで規制してるからでしょうか、それとも宗教の勧誘は脱法なんですかね。
よく知りませんが。


僕らがよく目にする地方の公共施設の中に、市や区の公民館があるんですけれど、
そういうのを借りる時にとてもドキドキするのが「この団体は、政治的・宗教的・営利的な目的で活動しているものではない」と証明するところです。
演劇は芸術的目的で、作っているんですが、妙にドキドキするんです。
「儲からないので営利的目的ではない」という主張はどうもいけないんだそうです。
お客さんに来てもらいたいからチラシを刷るわけですが、それはその、チケット料金が書いてあったら、営利目的だってなるんですかね。
じゃあ、たとえばよく映画を作っている宗教団体がありますけど、あれは市や区の公民館を使って会議しちゃいけないんでしょうかね。(たくさん施設あるし、公民館使わなくてもいいか)
本を出版した、その記念にパーティすることもありますけど、そこでじつは政治家だとか宗教家だとか業界人だとかたくさん来るんですってなったら、どうですか。
友達が政治家の娘と結婚して、その披露宴に参加したらとんでもない数の有象無象が跳梁跋扈してたら、どうですかね。
名刺交換は、勧誘の一つじゃないですか?


などと考えてしまうわけです。


国家公務員の人の名刺をもらったら、大阪市の職員ですって名刺もらったら、もう、何していいかわかんなくなるじゃないですか。
芝居のチラシだって、渡せないよ。
「ああ、この芝居、ちょっと時事ネタ入ってるなあ」とか「聖書のエピソード入れちゃったなあ」とか「ブッダの教えっぽくなっちゃったなあ」とか
「今の政治への不満があってこれ作ってるんだよなあ」とかいろいろ思うわけですよ。
そうしたら、もう、なんも作れなくなっちゃう。


ベトナム反戦運動のときに、反戦歌を歌ったら、
赤狩りの風吹きまくるときに、「みんなで働いて、一緒に幸せになろう」って言ったら、
そうしてそれを見に行ったら、聞きに行ったら、やっぱり逮捕・連行・っとなったんですかね。


そもそも、演劇って名指しで禁止されているのが、なんだか悲しい芸術だなあって思います。


「風刺」という文化がどうもできなくなってるのは、
それを見に行く人が少ないからだと思うんですけど、
そうして風刺劇を見た時に、観客からの反応にビビっているっていうのもあるんだと思う。
みんな、結局見てほしいし、お金ほしいし、暮らしていかないといけないし、嫌われたくないわけだし。
で、そういう風刺モノを公務員さんが見に行ったら、「援助した」とか「支援した」とかの法律に触れるんですかね。


「世界が平和になればいいのに」っていう願いは政治的ですかね?