誰が金払って芝居するか?

ちょっと昔、チケット代の話になって、料金をいくらに設定するか?という疑問が出てきました。


小屋レンタル代と
照明レンタルと音響経費、
大・小道具、衣装、ガムテープなどの舞台監督七つ道具費、
チラシ、DMなどの印刷・デザイン経費、及び送料
などなど、芝居を実質的に作り、宣伝するために必要な費用を全部合わせて
その合計金額を予想しうる観客の人数で割ります。

で、この中にスタッフやキャストにギャラを入れるかどうか、
そのギャラの中に交通費を入れるかどうかは、そのプロダクションの裁量で。

公の機関や企業から補助金が出るときもありますので、
そのおかげでチケットが安くなったりします。


で、ちょっと具体的な話をすると。
80人入ればいっぱいになってしまう劇場で、芝居することになりました、という設定で話しましょう。
都内の劇場だと、だいたい80人規模だと一日6〜7万円です。
で、水、木、金、土、日と5日間借りることにしました。なので、35万。
照明・音響機材はだいたい小屋にあるのでまかなうとして
衣装メイクは役者さんの持っているやつでまかなって、
大道具も別に作らずに、全部マイムで小道具もやる。
チラシを刷ってDM送ってだいたい5万円でなんとか。

本番は3日間。で、5ステージやりましょう。
5ステ*80人で、入るお客さん、400人。
なので、40,0000円÷400人で、チケット代1000円。


最低でも1000円ないと、芝居はまかないきれません。
このチケット代の中には、宣伝費と、小屋レンタル代しか入ってないんです。


芝居作るのに、一ヶ月毎日稽古します。
だいたい6時から9時までの3時間です。どこで練習するか?
東京だと公共の施設がある(青少年センターなど)のですが、これを借りるのにだいたい1時間500〜2000円かかります。
で、これを毎日やろうってなったら、最低でも3時間*1000円*25日間で、75000円。

都内の小劇場の役者さんたちはだいたい中央線や小田急線、東武線沿線に住んでいますので
稽古は新宿池袋周辺、あるいは代々木公園などの広い公園でひっそりとやります。
そのための交通費が往復で500円かかるとしましょうよ。
稽古のためにやってくる25日*500円で1,2500円。役者は5人てしましょう。なので6,2500円。

スタッフだってお金取ります。
照明さん、音響さんにプラン代として10000円〜50000円。ただでやってくれるやさしい友達を探しましょう。


おいおい、演出家だって、製作スタッフだって、舞台監督だって、制作さんたちだっていますよ。
その人たちにもなんかしら払いましょうよ。
役者にだって出演料払いましょ。
音楽の著作権だって必要でしょう。
仕込み中のご飯だって誰が払うんですかと。


もうワケわかんなくなってきますよ。



これを、全部お客さんが払うんですか、と。



余談ですが
昔、コンピュータのプログラマーさんと話してて、ソフトのコピーについて話してました。
一本のソフトを作るのに、1ヶ月費やします。
それで食っているので一日500円を食費に当てましょう。
家の家賃、光熱費、もろもろあわせて一ヶ月で80000円。
スタッフが一人いるので、2人分。
そのソフトに使った人件費だけで16万。最低でも一本16万円のコンピュータソフト。
それがコピーされまくっていったら、誰がその16万円払うの?ってなる。

もうほんとさ、お金の話をするとうんざりしますけどね。
このうんざりする気分ていうのが、資本主義、あるいは貨幣制度への批判につながるのかなあ、とも思いますが。


ロンドンのFringe(小劇場)の平均チケット料金が15ポンドです。
席はだいたい50〜80です。これが一ヶ月くらいやってます。
いつ行ってもほぼ満席です。



いい芝居作って、お客さんに見せたいだけなら、別にお金はいらないでしょう。
どっかの家で、娘が父親の誕生日に向けて脚本書いて芝居作ったほうがはるかに面白いです。
小さい場所を貸しきって、友達集めて面白い芝居するっていうんでいいなら、劇場かりんくてもいいでしょう。
でも、それじゃぁ足りないから、芝居小屋を借りて、やるわけでしょう。
じゃあ、身を切ってでも芝居しろよって話でしょう。
会社員して、なんとか時間切り詰めて芝居できる時間つくって、頼み込んでなんとか休みを取って、芝居するっていんで、いいもん作ったから、お客さんたくさん呼ぼうってっていうんなら分かるけど、
その理由に「お金もらえるから」とか「それで小屋代まかなえるから」とかいうのは、ちょっと違うでしょう、といいたい。


もっというんなら、
チケット代の収入を見込んで予算を立てるっていうのが、ホントにもう、嫌です。
取らぬ狸の皮算用ってな、まさにこのことじゃないかと思うんです。


お客さん来てほしいけど何人来るかは分からない、
それでもできるだけの努力して宣伝しようってなる気持ちはわかるんですけど、
ノルマ解消のためにお客呼ぶっていうのは、お客を呼ぶ目的を失ってるでしょう。
なんていうか、本末転倒でしょう。


金払ってでも見せたい、っていう人が芝居して、
金払ってでも見たい、っていう人が観客になって、
そうして一つの公演ができるわけでしょう。


そこを忘れんなよって、世のプロデューサーにいいたい。