マジもんの芸術家に会うこと。ヴィヴィアンと、ギルバート&ジョージ、それとヨーコと マリーナ。

ロンドンのサーペンタインギャラリーで行われた、
マニフェスト・マラソンに、参加してきました。


控え室でサイン・インをして、昼ごはんをさっそくもらいました。


会場のフランクゲーリー設計のパビリオンでは

オープニングに、ヴィヴィアン・ウェストウッドと、彼女の服を着た26人の若者がスピーチをしていました。

Vivienne Westwoodはとってもキレイな英語を話す、
上品で、ちょっとトンでるおばあちゃんでした。
まっ黄色の髪の毛に黒いタンクトップ、深い緑のゆったりしたパンツをはいて、ファー襟の真っ黒なベルベットのコートに、金の鎖を三つジャラッ、ジャラッと首にかけて、その真ん中に白い骸骨のようなペンダントが揺れていました。
白ぶちの大きなめがねをかけて、真っ白なつるつるの眉にオレンジ色のクキッとした線を引いて、同じ色のアイシャドー。目元に水色が入れてあって、薄いピンクの口紅をしていました。
めっちゃかっこよかった。


スピーチが終わって、彼女のあとの芸術家が何かパフォーマンスをやっているころ、ふと控え部屋をのぞいたら、
さっきまで僕が食べていたビーフシチューを、ヴィヴィアンがみんなに囲まれて一緒に食べてる!
オレとヴィヴィアン、同じ釜の飯を食ってる!しかも1メートルも離れていないところで!
同じ部屋で!
ちょっと、めまいがしました。


ずっと見てたかったから、控え室でのんびりしてて、ヴィヴィアンの帰るのを見送りました。
声なんかまったくかけられなかったけど、とっても気さくな人だったと思います。


そんな興奮も冷めやらぬころ、会場に戻ってぼんやりしてたら、
隣にギルバート&ジョージがいました。

どっちがどっちなのか僕は知らないくらいの二人なんですけど、
黄緑色にオレンジ、緑、赤の線のチェック柄、もう片方はオレンジ色に黄色と赤と緑の線のチェック柄。
二人ともメガネをかけてて、トレードマークのゴルバチョフ頭。
ビビった。
ずーっと二人でぴったりと立ってて、二人の距離は50cmを越えることはありませんでした。

あの二人はおかしい。もう、ついニヤニヤしてしまいます。


日が暮れて、夜になると、オノヨーコが遅れて駆けつけてきました。
よく思うんだけど、オノヨーコはいっつも走って登場する。

黒い帽子に白ぶちのサングラスをかけて、黒のジャケットにベスト、白いブラウスがひらひらしてて、
いつものようにちょっとメガネを鼻にかけて、上目遣いで会場を見渡すと、
遅れてきたことなんかまったく気にしないで、ゆっくり話し始めました。
観客もシーンと静まり返って、オノヨーコの話す言葉に耳を傾けていました。

universe is with me」
とかなんとか。

じゃあ、フィルムを見ましょうって言って、用意したビデオが流れ始めると、もう泣きそうになった。

それは真っ暗な中にゆっくりと何かが浮かび上がってきていて、音はどこかの森の鳥や虫の大合唱で、
ようやく見えるころにはそれが森を背景にしたジョンとヨーコとショーンの姿だとわかる。
するとジョンの顔がゆっくりとぼやけ始めて、隣のヨーコの顔もぼんやりし始める。続いてショーンも。
三人の姿がぼやけて消えて森の背景だけになると、光はその勢いを増して背景も真っ白にしていく
っていう、ものでした。


そのあとONOCHORDの話になって、そのドキュメントを見て、
ONOCHORDに使われるちっさい懐中電灯が会場に配られました。
もらっちゃった。

I love youという代わりに、
光を、一回、二回、三回、とピカピカやってください。というもの。
いつでもどこでも、そのピカピカを人に向けて、やってください。
もうみんなやり始めちゃって。

「じゃ、踊りましょうか」っていって、Give peace a chanceが流れるとオノヨーコ、舞台を降りて踊り始めました。
みんなもカモン!ってヨーコ叫ぶもんだから、観客大喜びでダンス。
とんでもなかったけど、
オノヨーコのやりたいことっていうのは、すごく共感できたし、
友達が言ってた「愛を感じる」っていう言葉が、ものすごくずっしり来た。
僕もおんなじことやってるぜって、言いたかった。
けど、終わるとすぐにさっと駆け出して、会場から消えてった。
なんだか、とんがったそよ風みたいな人だった。



僕が参加するマリーナ・アブラモヴィッチさんの出番が迫ってきて、
みんな白衣に着替えて、女の子たちは朱色のドレスに身を包んで、
最後の練習ってんでマリーナの指揮のもと、彼女のマニフェストを群唱。
始まったと思ったら、あっという間に舞台から降りてました。


マリーナは黒いタイトなスカートに黒のベストを着て、指揮者気取りで、
オノヨーコのことを絶賛してて、その前にやった人の発表にガッカリしてて、
「いい文章、すぐれた芸術家でも、話し方を知らないとものすごくつまんないのね!あたしたちはそんなことないわ!」と奮い立たせてくれてました。
なんだかすごくかわいいおばちゃんで、どっかで見たことあるなと思ったら、
あれは、よく三日月に顔が描かれるときの、あの顔でした。
わらっちゃった。


パフォーマンスの終わったあと、その台本にサインをもらって、ほくほくして帰りました。
しかも交通費20ポンド!もらいました。


久しぶりに舞台に立った興奮と、
あの芸術家たちと同じ時空に存在しているという喜びとを感じた、
そんな土曜日でした。
帰ってからのシャワーが気持ちよかったです。