ロード・オブ・ザ・リングの舞台版を見てきた

The Lord Of The Rings
↑クリックすると公式HPに行きます。英語ですが、映像がたっぷり。


at Theatre Royal Drury Lane


キンダイシュラン<★★★★☆>


映像があるのでどうぞ。↓
http://www.lotr.com/showfootage.php
ロード・オブ・ザ・リングのミュージカルです。
カナダのトロントから、
はるばるロンドンのウェストエンドにやってきたミュージカルです。

ちょっと余談邦題と原題と英語と日本語。


たしか映画になった時に「ロード・オブ・ザ・リング
って聞いて、
指輪をめぐる冒険だと聞いてて、
じゃあ、「指輪への道」って意味かなと思ってたら、
原題が「Lord」だとわかったので、
誰にも言わずにひっそりと恥じかいていました。


Lordというのは、手短に辞書引っ張り出してみたところ、
「君主」とか「領主」とか「統治者」いう意味もあったり、
貴族への敬称だったり
キリスト教の神様への呼びかけに使ったりします。
「Oh, Lord!Please!」とかいう台詞をどこかで見たような気もします。
そういうロードです。
ちなみに、道のロードは「Road」です。
発音が全然違うんだそうです。


さらにそれるけど、
英語では「The Lord of The Rings」です。
でも映画の邦題にすると「ロード・オブ・ザ・リング」です。
一番頭にある「The」が抜けてカタカナになっているのは、
一体どういうことなんでしょうか。
やっぱり定冠詞のtheってやつは、どうも面倒なものみたいです。
「ザ」をいっぺん言って、もういっぺん「ザ」というと、
なんだか確かにくどいような気もします。
でも、このくどい感じっていうのは、一体なんなんでしょうね?
喋る時に「あのー、あのー」と文節ごとに区切る人の話を聞いているような、そういう感じがします。
「ザ・ロード・オブ・ザ・リングス」
しかも複数形の「s」も抜けてます。
でも、ここで省略しちゃうから、結局英語の喋れない日本人とかになっちゃうのかなあ。
これもいわゆる、和製英語なんでしょうか。
そうとも知らずに「ツー・チケット・フォー・ロード・オブ・ザ・リング、プリーズ」とか
チケット売り場で言ってしまうんだろうなあ。


定冠詞のTheとか複数形のSって難しい。
入れればいいってもんじゃないし。
余計に苦手になりそうです。
友人の一人に、ほとんどの名詞の前に「the」を入れるのがいました。
ネイティブの人が彼の英語を聞いて、
どこからどこまでが許容範囲だったのか、大変興味があります。

さ、芝居の話を。

そういうわけで、「指輪物語」の舞台版です。
ちなみに僕はこの原作も映画も見たことも読んだこともないです。


劇場に入ると、客入れですでに俳優の何人かが
舞台の上でホビット(小人族)の遊びをやっています。
光る石をいじって投げてみたり、
客席までやってきて、虫取り網を回して何かを捕まえてみたり。
客席には子どもがたくさん来ているので、
そういう子達とコミュニケーションをモゴモゴやっているのも見えます。
とってもファンタジー


舞台はプロセニアムアーチから天井、客席のバルコニーまで
大木の根っこでびっしり埋め尽くされています。
緞帳幕に、中心直径3メートルほどの黒い穴が開いていて、
そこからなにやら怪しげな光が揺らめいています。


やがてアイルランド風の音楽が流れてきて
(タイタニックのジャックたちがグルグル回ったときのダンス音楽みたいなの)
ホビットたちは踊りだして、
たくさん捕まえた蛍のようなものをビンにあつめ、
それを大きな緞帳の穴に一気に放り込んで、
このミュージカルの幕は開きます。
蛍の光が広がると共に客席は暗くなり、
舞台は指輪物語の世界へと入っていきます。


見ていて飽きない舞台でした。
途中、指輪を捨てに行くためのメンバー集めで話がよくわかんなくなって困りましたが、
そういうのはもう、どうでもよくて。
大事なのは、音楽と踊りと、舞台装置のからくりと、
よくわかんない木の精霊とかの表現の仕方でした。

次々と思い出のエンタメたちが出てくる。


このミュージカルを見て思い出したのは、
ライオンキングと、劇団☆新感線
京都の電視遊戯科学舘(正しい漢字はこちらのページで→http://www.denyu.org/)でした。
それと、ラウンドハウスで見た
インドのアクロバット真夏の夜の夢」です。
(この「真夏の夜の夢」はとんでもないものだったのでまたあとで別に書きます)


ライオンキングでバンバン使われる竹馬。
これが、この指輪物語のミュージカルにはところどころ出てきます。
よかったのが黒い騎士。
一人のの役者が針金の馬の胴体と鎧が合体したようなのをかぶって、
さらに竹馬に乗って、めちゃくちゃ巨大な黒い騎士になります。
動きがすごく滑らかで
馬のお尻あたりからはボロ布が垂れていて、
一層、幽霊っぽさがでていました。


他にも、小さいバネの仕込んである、
ジャンピング竹馬みたいなのを装着して、
バック宙したりするザコキャラがいっぱい出てきて、
無駄にグルグル回転する舞台の上でスッ転んだりしながら
刀を振り回す連中と戦ったりするあたりがもう、快感。


で、思い出すのが、劇団☆新感線の殺陣です。
もうめっきり見ていないのだけど、
あの爽快感とザクザク斬っていく感じは新感線が唯一無二だと思うのだけど、
このミュージカルにもその片鱗を感じました。


まず、イギリス産の芝居で、
ザコキャラをザクザク斬っていくようなエンターテイメントを
僕は見たことがないです。


蜷川幸雄のコリオレーナスを見たときにも思ったんだけど、
一人のめっぽう強い人が
バシバシ人をなぎ倒していくのは刀の文化であって、
銃が発達した世界では通用しないのかもしれません。
なんというか、
三国無双と
メタルギアソリッドの違いなのかもしれないです。
(どちらも日本産のゲームだけど)


で、やっと、西洋の人間による、群集の殺陣のシーンが見れたのが、
この、「ザ・ロード・オブ・ザ・リングス」です。
カナダという土地の雰囲気も影響したのかもしれません。
日本近いし。


もっとこういうシーンが欲しかったなあとおもったので、
ちょっと物足りない気もしますが、
でもこのミュージカルがイギリスのミュージカル界に影響を与えるとしたら、
きっと、この殺陣シーンだと思います。
実際はホントに物足りないのだけど、
やったというところがすごいんです。


そして、これを読んでくれているひとのなかで
知っている人は少ないと思うのだけど、
京都にある電視遊戯科学舘とこのミュージカルについて。
京都で演劇をしていたのでホントによく覚えているのだけど、
僕らが「デンユウ」と呼んでいるこの劇団の芝居には、
必ずと言っていいほど、何か巨大な怪物が出てきました。
戦車だったり、ティラノサウルスの化石だったり、巨大な蜘蛛だったり。
これを毎回数人の黒子でもって動かすんですが、
ホントによく出来ていて、迫力満点で、
今でもあの衝撃は忘れられないです。


で、
このロード・オブ・ザ・リングにも、
巨大な蜘蛛が出てきます。
デンユウとまったく同じ手法で、動かしています。
ただね、これがまたいいところで物足りないんです。
1・糸が出ない
2・音はでかい
3・あんまり動かない
4・あっけない


もうね、国本さんを呼んでくれ!といいたくなりました。


お金があるのに、すごくもったいないんです。
すごくよく出来た衣装でホントにホビットドワーフは小さく見えたり、
ウィザードは大きく見えたり。
舞台はぐるぐる回るし、
コマ劇場みたいに、バウムクーヘンみたいに中心を残してセリあがったり、
さらに回転しながら螺旋階段を作れたり、
中心が奈落になって落ちたり、
もう、なんでもできる舞台で、
シーンごとにガンガン動いて、役者がすごく大変そうなんですが、
見ているぶんには大変に面白いんです。


舞台の上のほうからは長くて細い布にぶら下がって、
エルフたちが荘厳な歌を歌いながら降りてきたりします。
これは、アクロバットな「真夏の夜の夢」みたいでした。
Uの字に垂れてきた布に背中と脇を絡ませて、
グルグルと回りながら空中で歌うとこなんか、すごいです。
でもこれ、友人に言わせれば、
シルク・ド・ソレイユの十八番だそうです。



お金があるって、いいなあとつくづく思いました。

で、べた褒めしちゃいたくなるところ、2つ。

火山の火口に指輪を捨てるシーンがあるんだけど、
ここで、人が落ちます。
この落ち方がすごくいいです。
映像でどうぞ↓
http://www.lotr.com/showfootage_popup_6.php
火口は回転舞台の真ん中の小さいから赤い光がほとばしってて、
その中に人が落ちます。
そうするとさっき落ちたはずの人が、
スローモーションでもう一度舞台のてっぺんから落ちてきます。
もう、完全にやられちゃいました。
「レ・ミゼラブルでもやればいいのに!!!!!」と
心の中で叫んでしまいました。
(レ・ミゼの河に身を投げるシーンはガッカリでした)


もひとつは、ゴラム。
ゴラムすごい。
ホントすごい。
やっていた役者さん Michael Therriaultさん。
カナダでのオリジナルキャストの一人です。
身体がグネグネ。声がぐちゃぐちゃ。テンションハチャメチャ。
あんな役をよくやったと思います。
カーテンコールで一番喝采を受けていたのは、
誰でもない、ゴラムでした。
イギリスの客はホントに正直に拍手の音がはっきりしてます。
ゴラム出てきた瞬間、ちょっと劇場が揺れました。


話はまったくと言っていいほどわかりません。
なので、指輪物語のことはまったくわかりませんでした。
でもすっごく面白いです。
ストレートに楽しめるし、
見た後ちょっとぐったりするほど動きがあります。
友達が来たら、何よりもこれを見せたいと思います。


今までのミュージカルやエンターテイメントの、
総決算といった感じのミュージカルです。
それを他の人は「パクった」とかいうかもしれないけど。